琥珀
古代の樹木の樹脂が、幾星霜を経て宝石と呼ばれるに至った、琥珀。この宝石になぞらえ、寒天と砂糖を煮詰め、固めた菓子を、その美しさから、琥珀や琥珀菓、琥珀糖などと呼ぶようになったと伝えられています。シャリッとした外側の食感、やわらかい内側との妙味が楽しい、目にも彩な和菓子です。
一二〇〇年にわたる歴史と文化に育まれた味
天皇皇后両陛下が、毎年出御される地方行幸啓のひとつに、「全国豊かな海づくり大会」という行事がございます。平成二年、青森県で開催された同会出御の際、天皇陛下(現 上皇陛下)、御買い上げの栄誉に浴した菓子が私どもの「夢木立」です。
四年に一度開催される、全国菓子大博覧会においても、「柚子琥珀」、「花かずら」「宇治金時琥珀」が、裏千家「茶道家元賞」を受賞いたしました。
京菓子には、宮廷行事や儀式の折、献上品として用いられ、また茶道において用いられてきた背景がございます。長い歴史の中で、宮家、公家、茶人の審美眼に磨かれ、その製造技術は向上し、芸術性をもつまでに至りました。京菓子司 都では、伝統を大切にしながらも、創意工夫をこらし、皆様に新しい価値を感じていただけるような琥珀を創造してまいります。
皆様と、京都のご縁を結ぶ和菓子を
私どもの琥珀を、美しいと感じてくださったのなら、それは菓子の形姿に、古都の美を潜ませているからです。三方を山々に囲まれ、東に鴨川、西に桂川、南に宇治川の流れを望み、十二の月、花鳥風月がもたらす美にあふれた京都。寒天と砂糖を煮詰めて作る、透明感のある琥珀に、反射する陽光と水中で揺らめく川藻に見立てた柚子の果皮を入れ、鴨川の流れを表現した「柚子琥珀」、「花霞の宴」では、満開の桜が白く霞がかかったように見える春の情景を、桜色に染めた花びら型の琥珀を透明感のある琥珀の中に入れることで表しました。皆様には、お茶菓子や贈り物に選ばれ続ける味と共に、京の姿そのものをも楽しんでいただきたいと考えております。創業以来八十有余年、「美味しさを通して、心休まるひとときをお届けする」という変わらぬ思いを胸に、伏見の地で心を尽くしてまいりました。皆様に、琥珀を通して京都の風情をご覧いただけましたら幸いです。